アンコールはリビングで
4. 冷たい宣告と、祈りの夜

深夜の救急外来。

ストレッチャーに乗せられた凪が処置室へと消えていき、俺は冷たい待合室のベンチで、ただ一人、時間が過ぎるのを待っていた。

服に染み付いた消毒液の匂いが、嫌でも現実を突きつけてくる。
祈るように組んだ両手は、どれだけ強く握り締めても震えが止まらなかった。

どれくらい時間が経っただろうか。
処置室のドアが開き、疲れ切った表情の医師が姿を現した。

「……ご家族の方ですか?」

「あっ、いえ……同棲している、恋人です」

俺がそう答えた瞬間、医師の目に微かな戸惑いが走ったのが分かった。

「そうですか。……先ほど点滴を打ち、今はバイタルも安定して眠っています。命に別状はありません。ただ、今後の処置や正式な入院手続きとなると、どうしてもご親族の同意が必要になるのですが……」

「……っ」

ギリッと、自然に拳に爪が深く食い込んだ。

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