アンコールはリビングで

26 メモが導く未来と、待つ側の輪郭

1. 延長戦の終わりと、兄貴分からの電話

「……言ったな? 絶対逃がさねぇから」

病み上がりの身体に鞭打つような『看病の延長戦』と称した甘いじゃれ合いは、結局、凪の仕事の時間が迫ってくるまで続いた。

「もうっ、本当に遅刻しちゃう……! 湊は今日絶対大人しく寝てなきゃだめなんだよ?」

「はいはい。わかってるって」

ベッドから逃げるように抜け出した凪は、少しだけ赤い顔で俺を振り返りつつ、慌ただしい足音を立てて洗面所へと向かっていった。

その可愛らしい後ろ姿を見送りながら、俺は深い安堵の息を吐き出し、ベッドサイドの小さなテーブルに置いてあったスマートフォンに手を伸ばした。

昨日の夜、限界の手前で踏みとどまった俺を、彼女は一晩中、手を握って看病してくれた。

その献身と、朝の最高の『充電』のおかげで、嘘みたいに身体が軽く、熱も完全に平熱へと戻っている。

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