アンコールはリビングで
「……うわ、早っ」

俺は少し身構えながら、通話ボタンを押した。

「……おはようございます」

『早瀬くん!? 大丈夫!?』

電話口から飛び出してきたのは、普段の温厚なトーンとは違う、ひどく焦ったような島崎さんの声だった。

「あっ、はい……熱はもう無事に下がって、今はかなり元気になりました。本当にすみません」

『そう……。本当に、昨日の朝から様子おかしかったもんね。微熱でもあるんだろうなと思ってたよ……夜に上がっちゃったのか……』

俺の強がりを、この有能なマネージャーは完全に見抜いていたらしい。
痛いところを突かれ、俺は思わず言葉に詰まった。

「……ほんと、申し訳ないです。島崎さんにも、あちこちスケジュール調整の面倒かけてしまって……」

『ううん、こちらもツアー前に少し詰め込み過ぎたから……昨日の撮影も延期にしてあげられなくて、ごめんね』

「いえ。体調管理までがプロの仕事ですから。俺の自己管理の甘さです。本当に申し訳ありません」

深く頭を下げるような気持ちでそう伝えると、電話の向こうで島崎さんが「ふぅ」と小さく息を吐く音が聞こえた。

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