アンコールはリビングで
それに、もう一つラッキーな理由がある。
見たい景色が『夜のライトアップ』だということだ。

ありがたいことに、今の俺は外を歩けばすぐに顔を指されてしまうくらいには、名前が売れてしまった。

昼間の明るい園内や、人混みの中を堂々と二人で歩くのは、いくら変装してもリスクが高すぎるし、何より凪に窮屈な思いをさせてしまう。

だが、暗闇に包まれた夜のライトアップの時間帯であれば、帽子を目深に被っていれば、多少は人目を誤魔化しやすくなるはずだ。

「よし……あとは宿だな」

俺は素早く宿泊予約サイトを開いた。
足利から車で足を伸ばせる範囲で、お忍び旅行に最適な場所。
行き先は、鬼怒川温泉だ。

他の客と顔を合わせずにチェックインから食事まで完結できる、離れの高級旅館。

そしてもちろん、誰にも邪魔されずに凪の肌に触れられる『客室露天風呂付き』の部屋。

運良く、キャンセルが出たのか一部屋だけ空いていたスイートルームを、俺は迷うことなく即座に押さえた。

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