アンコールはリビングで
2. 渓谷の隠れ家と、優しい晩餐

植物園を出て車を走らせること約1時間。

すっかり夜の闇に包まれた山道を抜け、俺たちは今夜の宿泊先である鬼怒川の温泉街へと到着した。

予約していたのは、渓谷沿いにひっそりと佇む、全室離れの高級旅館。
チェックインも部屋で行うため、他の客と顔を合わせることは一切ない、完全なプライベート空間だ。

「わぁ……お部屋、すっごく広いし、木のいい匂いがする……!」

案内されたスイートルームに入るなり、凪はパァッと顔を輝かせて室内を見て回った。

琉球畳が敷かれた広々とした和室に、寝心地の良さそうな大きなベッドが二つ並んだ洋室。
そして、窓の外のテラスには、渓谷のせせらぎを聞きながら入れる、ヒノキ造りの立派な客室露天風呂が備え付けられている。

「気に入ったか?」

「うん……! 最高すぎるよ、湊。……こんな素敵なところ、本当にいいの?」

「何言ってんだ。毎日仕事も頑張って、俺の健康管理もして、家のこともやってくれてる凪へのご褒美だろ。存分に甘やかされてくれ」

俺がソファーに腰を下ろして腕を広げると、凪はふんわりと嬉しそうに笑い、俺の隣にちょこんと座って肩に頭を預けてきた。

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