アンコールはリビングで
「……終わらねぇよ」

「え?」

「この旅行が終わっても、俺たちはずっと一緒にいるんだからさ」

驚いてこちらを見た凪に、俺は真っ直ぐに前を見たまま、力強く言葉を紡いだ。

「これから先、また死ぬほど忙しくなるし、しんどい壁にぶつかることもあると思う。でも……お互いが健康で、ちゃんと笑ってさえいれば。こんな時間、俺たちなら何度だって作れるだろ」

信号待ちの合間に、少しだけ視線を凪の方へ向ける。
俺の言葉に、凪の目が少しだけ見開かれ、やがて、花が咲くように柔らかく美しい笑顔へと変わった。

「……うん。そうだね。私たち、これから何度でも、いろんな景色を見に行けるんだもんね」

「そういうこと。だから……まずはこの2ヶ月、二人で気合い入れて乗り切ろうぜ」

「うん……任せて。二人で走りきろう」

繋いだ手に、彼女から力強い温もりが返ってくる。

眼前に広がる夕景は、これからの俺たちの未来を祝福しているかのように、どこまでも明るく、温かく輝いていた。

過酷なスケジュールも、重圧も。

隣に彼女という最強の味方がいてくれる限り、恐れるものは何もない。

日常に持ち帰ったこの最高のアンコールを胸に、俺たちは迷うことなく、自分たちの帰るべきリビングへと真っ直ぐに走り続けた。
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