アンコールはリビングで

32 独占欲のグラス

1. 焦燥のドライブ

同窓会当日の5月上旬。土曜日の夜、20時過ぎ。

全国ツアーの演出会議を、俺は天才的な直感と強引さで、予定より実に一時間半も早く終わらせた。

「お、お疲れ様でしたー!」

呆気にとられているレコード会社のスタッフたちを後目に、俺は逃げるように会議室を後にした。

「早瀬くん、お疲れ様。……すごい巻きだったね」

廊下に出ると、壁に寄りかかって待っていたマネージャーの島崎さんが、呆れたような、けれど面白がるような笑顔で歩み寄ってきた。

「お疲れ様っす。……別に、早く決断した方が全員の効率がいいじゃないっすか」

「はいはい、そうだね。ツアーへの熱意が溢れ出ちゃってたのかな? ……それとも、六本木にいる『極上のご褒美』のことで頭がいっぱいだったからかな?」

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