アンコールはリビングで
地下駐車場から夜の東京へと滑り出した送迎車の後部座席。
窓の外を流れるネオンの光をぼんやりと見つめながら、俺は少し長めの前髪を鬱陶しそうに掻き上げ、シャツの襟元を引っ張った。

ここから六本木の交差点までは、車で二十分弱。

凪からは『今お店出たよ! 交差点のところで待ってるね』と、数分前にメッセージが入っていた。

(凪一人で待ってんだよな……。変なナンパとかされてねぇだろうな)

(いや、それよりも……凪が気にしてた元彼……未練がましく連絡先とか聞いてねぇだろうな)

考えれば考えるほど、胸の奥で黒いマグマのような独占欲がブクブクと泡を立てて膨れ上がっていく。

外の世界でどれだけ称賛を浴びようと、どれだけ完璧なスターを演じようと。

俺の根底にあるのは、あの小さくて優しい彼女に完全に依存しきっている、醜いくらいに独占欲の強い一人の男の素顔だ。

俺の隣の特等席は、凪だけのものだ。
そして、凪の隣の特等席も、俺だけのものじゃなきゃ絶対に嫌だ。

凪が俺に向けてくれるあの柔らかい笑顔も、俺の匂いに包まれて安心しきった寝顔も、全部、俺以外の誰にも見せたくない。

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