アンコールはリビングで
「……島崎さん」

「ん? どうしたの?」

「……交差点の少し手前で降ろしてください。歩いて迎えに行くんで」

「分かった。でも、絶対に変装は取らないこと。パパラッチに見つかったら、せっかくの凪さんとのデートが台無しになるからね」

「分かってますよ。……ただ、少しでも早く凪の顔が見たいだけっす」

車が六本木の裏通りに停まる。
俺は島崎さんに短く礼を言い、黒いキャップを深く被り、マスクを目の下まで引き上げて車を降りた。

週末の六本木は、酒と香水、そして様々な欲望の匂いが入り混じってひどく喧騒に包まれていた。

この街のどこかに、俺の凪がいる。
人混みをすり抜けながら、俺は交差点へと急ぎ足で向かった。

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