アンコールはリビングで
(……ふざけんな。……マジで、ふざけんな)

用紙を持つ俺の手に、ギリッと強い力がこもる。
今すぐこの記事をぐしゃぐしゃに丸めて、破り捨ててやりたい。

えも言われぬおぞましい嫌悪感が、胃の奥からせり上がってくる。

俺自身が撮られるのは百歩譲ってどうでもいい。
だが、凪と作り上げてきたあの大切な『聖域』を土足で踏みにじられたことだけは、絶対に許せなかった。

「……早瀬くんも、かなり気をつけてくれていたと思うんだけどね」

志水専務が、責めるわけでもなく、静かで事務的なトーンで口を開いた。

「かなりひどい推測と、こじつけの記事だ。君はアイドルではないし、プライベートは自由にさせている。デビュー前からこの女性と同棲していることも、我々は把握しているからね。交際自体は何も問題ないんだが……」

「分かっています。……ツアー前で、新曲のリリース直前。タイミングが、最悪すぎるってことですよね」

俺は必死に怒りを腹の底に押さえ込みながら、志水専務を真っ直ぐに見据えて答えた。

傍目には冷静に見えたかもしれないが、隣にいる島崎さんには、俺が今どれほど静かにキレているか痛いほど伝わっているはずだ。

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