アンコールはリビングで
「……もしかして、この前のパパラッチの件……なんかあったの?」

「いや、実害は出てねぇよ。ただ、念には念を入れてな」

俺は揉み消した記事のことは伏せたまま、凪の頭を優しく撫でた。

「あの時事務所から借りた車とメーカーは同じなんだけど、これはもっとスタイリッシュなモデルでさ。……派手な感じがないのが、凪も好きかなと思って」

俺がタブレットをスワイプして内装の写真を見せると、凪の表情がパッと明るくなった。

俺が1人で勝手に車を買うこともできた。
だが、凪はしっかりと自分の足で立ち、社会で戦っている自立した女性だ。
その気にさえなれば、彼女自身の手でこれくらいの買い物をすることだってできるだろう。

だからこそ、俺が1人で決めるのではなく、彼女の意見を取り入れて『2人で選ぶプロセス』がどうしても必要だったのだ。

「わぁ……中、すっごく綺麗! タッチパネルが未来的で、シートの色も上品だね……」

「だろ? 凪は、どの内装の色が好き?」

「ええっ、私が決めていいの!?」

「当たり前だろ。俺の隣の助手席は、一生凪の指定席なんだから」

俺がそう言うと、彼女は耳まで真っ赤にしながら、嬉しそうに画面を覗き込んできた。

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