アンコールはリビングで
早瀬湊という男は、今やステラミュージックが社運を賭けて推しているトップスターだ。

だが、俺にとってはそれ以上に、彼と凪さんの関係は、絶対に部外者に踏みにじらせてはいけない『不可侵の聖域』だった。

なぜなら俺は、彼が誰よりも純粋に彼女を愛し、彼女の存在だけを支えにして、この過酷な芸能界の最前線で戦っているのを知っているからだ。

俺にとっての華や子どもたちと同じように。
早瀬くんにとっての凪さんは、彼の『命綱』そのものなのだ。

俺はスマホを掴み、迷うことなく席を立った。

「……ちょっと、電話一本入れてくる」

周囲のスタッフに短く告げ、俺は足早に非常階段の踊り場へと向かった。

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