アンコールはリビングで
2. 氷の交渉と、フィクサーの暗躍

非常階段の冷たいコンクリートの壁に寄りかかり、俺は『週刊フロンティア』の編集長の直通番号をタップした。

数回のコール音の後、相手が電話に出る。

『……はい、フロンティア編集部、黒田ですが』

「お世話になっております。ステラミュージックの島崎です」

俺が名乗った瞬間、電話の向こうで微かに息を呑む気配がした。

『あ、ああ……島崎さん。先ほど送らせていただいたゲラの件ですね。いやぁ、うちの記者がたまたま良い画を撮ってきましてね……』

「ええ、拝見しました」

俺は声をワントーン落とし、一切の感情を排した氷のような声で遮った。

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