アンコールはリビングで
(まあ、湊は『音楽一筋』の人だから、ドラマなんて絶対に断るだろうけど……。でも、もし彼がこの役を演じてくれたら……私、絶対にもっと惚れ直しちゃうだろうなぁ……)

そんなあり得ない妄想をして、一人で勝手に顔を赤くしていると。

「水沢さーん! 午後の資材搬入の件で確認お願いできますかー!」

「あっ、はい! 今行きます!」

職人さんの大きな声で、私は甘い二次元の世界から一気に現実へと引き戻された。

急いで残りのコーヒーを飲み干し、ヘルメットを被って極寒の現場へと駆け出していく。

まさかこの数時間後。

私のこのささやかな妄想が、彼自身の『異常な独占欲』によって現実のものになるなんて、この時の私は知る由もなかったのだ。

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