アンコールはリビングで
「朔斗くんっ!?」

凪はコーヒーが波打つことも気にせず、トンッとマグカップをテーブルに置くと、両手で口元を覆った。

その頬が、みるみるうちに乙女のように赤く染まっていく。

「私っ、この漫画の中で、主人公の相手役よりも断然、朔斗くん推しなの……っ!」

「……は?」

「一見クールで口が悪いんだけど、実は主人公のこと誰よりも見てて、いざという時には絶対助けてくれてね!」

目をキラキラと輝かせて力説する凪。その尋常じゃない熱気に、俺は少しだけ上体を反らした。

「最終的には同僚の相手役に主人公を譲って身を引いちゃう『あて馬』ポジションなんだけど……っ」

そこで一度言葉を詰まらせると、凪は胸がきゅっと締め付けられたように両手を重ね、瞳を潤ませる。

「……その切ない笑顔がもう、本当にかっこよくて……っ!」

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