アンコールはリビングで
『――さあ、今夜のゲストは早瀬湊さんです!』

MCのハイテンションな呼び込みに、スタイリッシュな衣装に身を包んだ湊が、カメラに向かって軽く会釈をする。

『来月でついにデビュー4周年、そして30歳を迎えられるということですが……いやぁ、まだ4年とは思えないほどの圧倒的な人気とカリスマ性ですよね!』

大袈裟に持ち上げるMCに対し、画面の中の彼はどこか涼しげで、いつもの落ち着いた表情を崩さない。

『ファンの間では、『音楽の神様』とまで言われることもあるとか!? たしかに、この早瀬さんの音楽性に触れるとそう言いたくなるのも分かりますよー!』

画面の中のMCが煽るように語りかけると、湊は少しだけ困ったように苦笑して、謙遜するように軽く頭を下げた。

『いやいや、神様だなんてとんでもないです。僕1人の力じゃないので。周りのスタッフと、聴いてくださるファンの皆さんのおかげです』

テレビの中の彼は、完璧な『アーティスト・早瀬湊』の顔をしていた。

洗練された言葉選びと、落ち着いた大人の色気。
出会った頃の彼を少し彷彿とさせるような、柔らかくて丁寧な敬語。

< 593 / 796 >

この作品をシェア

pagetop