アンコールはリビングで
――そして、約束通り数日後の夜。

私はリビングのソファでくつろぎながら、トーク画面を開いた。

そろそろ、あの子もあの『聖域』で、少しだけ肩の荷を下ろしている頃だろうか。

私は今のこの温かい気持ちと、姉としての少しの小言を込めて、文字を打ち込んだ。


澄兄:『ツアーのチケット、一般とファンクラブ両方でしっかり押さえたぞ。最近メディア出ずっぱりだけど、ちゃんと寝てるか? 無理すんなよ』

泉:『テレビ見たわよー! 湊、またかっこよくなったんじゃない? でもご飯はちゃんと食べなさいよ! 凪ちゃんに迷惑かけないようにね! ライブ、すっごく楽しみにしてるわ!』


送信ボタンを押す。

あの子のことだ。
きっと今頃、凪ちゃんの隣でこのメッセージを見て、少しだけ照れくさそうに笑っているに違いない。 

「……頑張りなさいよ、湊」

私は誰もいないリビングで小さく呟き、スマホの画面を閉じた。

彼が外の世界でどんなに大きな重圧と戦っていようと、私たち兄姉は、いつだって彼の最強の『味方(スポンサー)』だ。

そして、彼が疲れ果てた時に帰る場所は、私たちが口出しするまでもなく、あの完璧で温かい彼女が守ってくれている。

そう思うだけで、私自身の心までが、ひだまりのように温かくなるのを感じていた。

早瀬湊の物語は、まだ始まったばかりだ。

そして、私たち家族の不器用で温かい絆も、ずっと続いていくのだ。
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