アンコールはリビングで
「……朝メシ、俺が適当に作る。その間に支度してこいよ」

俺は床に落ちていた愛用スウェットを拾い上げ、頭からすっぽりと被った。

そして、寝癖のついた髪をガシガシと掻き回しながら、凪を振り返る。

「昨日できたフレーズ、起きたら頭飛んでねぇか不安だからさ……飯の前に、一回だけ弾いて確かめるわ」

「うん。わかった。ご飯ありがとね、湊。……楽しみにしてる」

俺はベッドから降りた凪の額に、改めて朝の挨拶代わりのキスを落とした。

いつもの安心する彼女の香りが、俺の鼻先をくすぐる。
洗面所へ向かう凪の背中を見送りながら、俺はリビングと繋がっているキッチンへと向かった。

コーヒーの香りがリビングに広がる中、昨夜完成したばかりのあのメロディを小さく口ずさむ。

『Melt』という曲に込めた、理性が飛ぶくらい彼女を抱きしめた熱と、朝の穏やかな時間が交差するこの場所が、俺にとっての何よりの「Sanctuary(聖域)」なのだと、改めて深く噛み締めていた。
< 691 / 796 >

この作品をシェア

pagetop