アンコールはリビングで
「この車に乗るの、先月の藤棚旅行の時以来だね」

「ああ。……あの時は、凪も運転してくれたよな」

湊が、少しだけ懐かしむような、甘い声を出した。

「あの時の凪の運転してる横顔、マジでかっこよくて……俺、助手席でずっと見惚れてたわ」

「も、もう! 恥ずかしいから思い出さないでよ……」

「なんで?すげぇ好きだったのに」

からかうように笑う彼の横顔を見て、私の胸の奥がきゅっと締め付けられる。

(……明日から、この綺麗な横顔は、ドームを埋め尽くす何万人ものファンたちのものになるんだな)

この大好きな笑顔を独り占めできなくなるのだと思うと、急に寂しさが込み上げてきた。

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