アンコールはリビングで
島崎さんに付き合って足を踏み入れた、日曜日で賑わう商業施設。

俺は帽子とサングラス、マスクで完全に顔を隠したまま、島崎さんがスタイリストと電話で話しているのを少し離れた場所で待っていた。

ふと、視界の端に、洗練された高級ジュエリーブランドのショーウィンドウが飛び込んできた。
ライトに照らされて輝く、華奢なリングやネックレスの数々。

(……凪に、似合いそうだな)

無意識のうちに、足がそのショーウィンドウの前に吸い寄せられていた。

今年のバレンタイン、俺は凪に『クロススター』のネックレスを贈った。

「俺のだっていう印」なんて、我ながら重すぎる言葉と一緒に彼女の首元にあの華奢なチェーンを着けた時の、彼女の少し恥じらったような、けれど嬉しそうな熱い瞳を、今でも鮮明に覚えている。

ガラス越しに見つめたのは、何の変哲もない、けれど上質なプラチナの細いリングだった。

装飾を削ぎ落とした純粋な輝きが、凪の白くて細い指に収まる様子が、あまりにもリアルに脳裏に浮かぶ。

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