アンコールはリビングで
4. 祭りの終わりと、真のアンコールへ

午後4時。福岡のドーム。

開演を控えたステージ裏は、スタッフたちの怒号と重低音のBGMが混ざり合い、異様な熱気を孕んでいた。

「早瀬さん、スタンバイ五分前です!」

「はい」

俺はディレクターに向かって短く答え、イヤーモニターを耳に押し込んだ。

大きく深呼吸をする。
肺に満ちるのは、熱狂の匂いと、微かな埃の匂い。

(……今日を終わらせれば、明日、凪に会える)

左手首に着けた、あのプラチナのバングルを、右手でギュッと強く握りしめる。

冷たい金属の感触が、東京で待つ凪の存在を確かなものとして繋ぎ止めてくれる。
どんなに遠く離れていても、俺の帰るべき『聖域』はただ一つだ。

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