アンコールはリビングで
「……よし、いくか」

暗闇のステージへと続く階段を駆け上がる。

視界が開け、何万ものペンライトの光が銀河のように揺れるドームの空間へと飛び出した瞬間。

俺はただの「早瀬湊」から、ステージを創る音楽の「神様」へと完璧にスイッチを切り替えた。

地鳴りのような歓声を全身に浴びながら、俺は不敵に笑う。
歌う。叫ぶ。
すべてを燃やし尽くすように。

明日、あの静かで温かいリビングのドアを開けるために。

この過酷で美しいステージすらも、俺にとっては、凪の元へと帰るための、ただの長い長いイントロダクションに過ぎないのだから。
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