アンコールはリビングで
「……ただいま、凪。……ま、今帰ってきたのは凪の方だけどな」

「う、うん……ただいま」

「おかえり。仕事、お疲れ」

湊の大きな手が、私の腰を抱き寄せながら、背中をポンポンと優しく叩く。
そして、愛おしむように私の頭を撫でてくれた。

「……湊に早く会いたすぎて、仕事、明日に回して来ちゃった」

私の首筋に顔を埋める湊へ、自分でも驚くほど甘い声が出てしまった。
けれど、隠すつもりもなかった。

「……マジかよ。あのクソ真面目な凪が?」

「だって……湊に、早く会いたかったんだもん……」

私の素直な言葉に、湊が「……っ」と短く息を呑む音が聞こえた。

「……っ、俺もだわ。マジで、死ぬほど会いたかった」

彼の腕の力がさらに強くなり、私の身体が彼の胸に隙間なく押し付けられる。

見上げた彼の琥珀色の瞳は、ステージでの熱狂の余韻と、私への剥き出しの愛情で、深く、甘く揺れていた。

私たちは言葉を交わす代わりに、引き寄せられるようにしてそっと唇を重ねた。

ただいま。
おかえり。

そんな当たり前の言葉の裏にある、狂おしいほどの熱を確かめ合うように、何度も、何度も。

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