アンコールはリビングで
「そんな顔でそんなこと言われたら、俺……明日、仕事行きたくなくなるだろ」

困ったように笑いながらも、その視線は逃げ場を塞ぐように私を射抜いている。

言葉を返す代わりに、私は彼の少し開いた胸元にそっと額を擦り寄せた。
彼から立ち上る熱と香りに、もうこれ以上待てないという私の焦りが伝わったのかもしれない。

「……分かった。お望み通り、溶けるまで甘やかしてやる」

彼は慈しむように私の頬を撫で、これからの長い夜を予感させるような、深く、甘いキスを落とした。

日本中を熱狂させる完璧なスターは、今夜だけは、私だけの甘えん坊で強引な一人の男に戻る。

福岡からの帰還を果たした再会の夜は、私たちの会えなかった寂しさを全部溶かしてしまうほど、どこまでも甘く、深く更けていった。
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