アンコールはリビングで

Side B 愛おしい日常

1. 微睡みの見送りと、残された匂い

意識の底から、ゆっくりと浮上していく感覚があった。

「……湊。……湊?」

遠くの方で、俺の名前を呼ぶ声がする。
世界で一番心地よくて、大好きな声。

「……ん……」

重い瞼を微かに開けると、朝の柔らかな日差しが差し込む寝室の景色が、ぼんやりと視界に滲んだ。

全身の筋肉が溶けたように重く、ベッドに縫い付けられているみたいだ。

福岡での二日間のドーム公演の強烈な疲労に加えて、昨夜、再会の熱に浮かされて限界まで凪に溺れた余韻が、心地よい気だるさとなって身体の芯に残っていた。

< 760 / 796 >

この作品をシェア

pagetop