アンコールはリビングで
やっぱり、ツアーのファイナルに向けて、湊は過集中気味だ。

集中させてあげたい気持ちは山々だけれど、これでは彼自身がどこかで根詰めてすり減ってしまわないか心配になる。

プロのアーティストを一番近くで支えるというのは、簡単なことじゃない。

私がいくら美味しいご飯を作っても、彼が背負っている『五万人を熱狂させる』という重圧を、代わりに背負ってあげることはできないのだから。

(……でも、だからこそ。私がこの場所を、守り抜かなきゃいけないんだ)

彼は、音楽の神様である前に、不器用で、私のご飯が大好きなただの一人の男だ。

こんなに凄くて、重たいものを背負っている人を、私が支えなくてどうする。
彼がいつでも安心して帰ってこられるこの『聖域』を、私が絶対に守り抜く。

私は、アイスティーのグラスを両手で強く握りしめながら、静かに、けれど確かな覚悟を決めていた。

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