アンコールはリビングで
朝。
マンションの玄関で、彼を送り出す時間。

「じゃ、行ってくるわ」

といつもの調子を装って湊は言うけれど、その表情にはすでに、表舞台の『早瀬湊』の張り詰めた空気が滲んでいる。

「うん……今日もリハから頑張ってね。夜には、私も観に行くから」

私は彼を真っ直ぐに見つめて伝えた。

最近は家に帰ってきても、アドレナリンのせいかなんだかピンと糸を張ったような緊張感を纏っている湊。

その集中を途切れさせたくないと思いつつも、私は彼が出発する直前、着ているTシャツの裾をちょんと引いた。

「……ん?」

振り返った彼の頬に、私は背伸びをして、そっと唇を寄せた。

チュッ、とささやかなリップ音が響く。

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