アンコールはリビングで
「いただきます」
「……いただきます」

一口味噌汁を飲む。
朝よりも味が染みていて、五臓六腑に染み渡る。

「……美味しい。人に温めてもらうご飯って、なんでこんなに美味しいんだろ」

「レンチンしただけだろ。大袈裟だな」

湊は納豆ご飯を豪快にかき込みながら、今日スタジオであった出来事を話してくれた。
私も、後輩がどれだけ必死だったか(そしてコーヒーを奢ってもらう約束をしたこと)を話して笑い合った。

テレビからは、音楽番組で湊のニューアルバムを紹介する映像が流れている。

華やかな芸能界の話も、泥臭いオフィスの話も、この食卓の上では等しく「今日のお土産話」になる。

「……あ、そういえば」

湊が思い出したように言った。

「今日、もち麦入りの飯……スタッフに差し入れでもらった弁当より美味かったわ」

「えっ」

「腹持ちも良かったし。……まぁ、ゴムみてぇな食感も悪くねぇかなって」

彼はそっぽを向いて、ボソッと言った。

素直じゃない。でも、それが彼なりの精一杯のデレだと気づいて、私は胸が熱くなる。
朝あんなに文句言ってたのに、結局気に入ってるんじゃない。

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