アンコールはリビングで
「……って、ちょっと待って」
私は彼を呼び止めた。
「湊、まさかその格好でスタジオ行く気?」
彼が着ているのは、首元が若干ヨレて、全体的にうっすら毛玉が見えるグレーのスウェットのセットアップだ。
確かに形は綺麗だが、どう見ても「着古した部屋着」にしか見えない。
「あ? なんでだよ。これ一番しっくりくんだよ」
「しっくりって……それ、私があげたやつだよね? 3年前の誕生日に」
そう。あれは私たちが付き合い始めた頃。
当時まだデビューしたてだった彼に、私が「少しでも良いものを着てほしい」と、清水の舞台から飛び降りる覚悟で買った有名ブランドのスウェットだ。
まさか3年間、こんなになるまで着倒されるとは夢にも思っていなかった。
「もうボロボロじゃん。膝とか出ちゃってるし、新しいの着なよ」
「やだね。これが一番身体に馴染んでんの。……それに」
彼はそこで言葉を切り、視線を泳がせた。
そして、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で呟く。
「……これ着てっと、凪と一緒にいるみたいで落ち着くんだよ」
「……え?」
私は彼を呼び止めた。
「湊、まさかその格好でスタジオ行く気?」
彼が着ているのは、首元が若干ヨレて、全体的にうっすら毛玉が見えるグレーのスウェットのセットアップだ。
確かに形は綺麗だが、どう見ても「着古した部屋着」にしか見えない。
「あ? なんでだよ。これ一番しっくりくんだよ」
「しっくりって……それ、私があげたやつだよね? 3年前の誕生日に」
そう。あれは私たちが付き合い始めた頃。
当時まだデビューしたてだった彼に、私が「少しでも良いものを着てほしい」と、清水の舞台から飛び降りる覚悟で買った有名ブランドのスウェットだ。
まさか3年間、こんなになるまで着倒されるとは夢にも思っていなかった。
「もうボロボロじゃん。膝とか出ちゃってるし、新しいの着なよ」
「やだね。これが一番身体に馴染んでんの。……それに」
彼はそこで言葉を切り、視線を泳がせた。
そして、聞こえるか聞こえないかくらいの小声で呟く。
「……これ着てっと、凪と一緒にいるみたいで落ち着くんだよ」
「……え?」