アンコールはリビングで
5. アンコールはリビングで 

「ただいまー」
「おかえり」

家のドアを開けた瞬間、緊張の糸がプツリと切れた。
私はパンプスを脱ぎ捨て、そのまま彼に抱きついた。

「うぅ〜……疲れたぁ……課長のアホ〜……」

「はいはい。よしよし」

彼は私の背中をポンポンと一定のリズムで叩いてくれる。
この大きな手。落ち着く匂い。

私が一番帰りたかった場所。

「……お前、先に風呂入れよ。飯、適当に準備すっから」

「えっ、でも……」

「その顔でキッチン立たれたら飯が不味くなる。いいから行け」

「……うぅ、スパダリかよ……ありがとう」

私は彼の優しさに甘え、お風呂場へと直行した。
シャワーを浴びて部屋着に着替え、リビングに戻る。

すると、テーブルには温め直されたご飯と味噌汁、そしてパックのままの納豆、さらに冷蔵庫にあった余り野菜の浅漬けが並んでいた。

「……お、上がったか」

湊はすでに、外に着ていった例のスウェットから、家専用のさらにゆるいTシャツとハーフパンツに着替えていた。
髪は無造作におろし、完全にオフモードだ。

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