アンコールはリビングで
でも、その色気も、彼が音楽の中で自分を解放できている証拠だ。

あんな風に自信に満ちた表情で歌う弟の姿を見るのは、本当に誇らしかった。

やがて、ライブは終盤のMCへと差し掛かった。

ピンスポットに照らされた湊が、五万人に向かって静かに語り始める。

『僕がこうして、ステージの上で自分らしく歌い続けられるのは……僕を、ただの一人の人間として繋ぎ止めてくれる、大切な「場所」があるからです』

その言葉を聞いた瞬間。

私と澄兄は、ピタリと動きを止めた。

『どれだけ遠くへ行っても。……僕が僕に還れる、誰にも侵されない不可侵の「聖域」』

静かなドームに響く、弟のまっすぐな言葉。

それが誰のことを指しているのか、私たちには痛いほど分かった。

モニターに大写しになった湊の胸元に、キラリと光るプラチナのネックレスが見えた。

今まであんなアクセサリーはつけていなかった。

きっと、彼の大切な「聖域」である彼女からの贈り物に違いない。

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