アンコールはリビングで
湊には、表舞台に立つ『早瀬湊』としての顔がある。

彼が背負っている事務所の期待や、あれだけたくさんいる熱狂的なファンたちの存在を考えれば、プライベートのこととはいえ、そう簡単に人生の節目を決められないのも、勝手に動けないのも十分に理解している。

私自身、湊とこうやって一緒に暮らしている日々に、心からの幸せと安らぎを感じているから。

『結婚』という法的な形式や、紙切れ一枚の制度に対する執着は、そこまでないつもりだった。

昨日の夜も、ドームから帰ってきた彼を抱きしめながら、ただ純粋に「永遠に、私がこの人の帰る場所でありたい」と、そう決意したばかりだ。

(……でも)

彼とも、具体的にその手の話(将来のこと)を詰めたことは無い。

お互いに居心地が良すぎて、あえて触れずにここまで来てしまった部分もある。

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