アンコールはリビングで
(湊は……本当は、どう思ってるんだろう)

自分のアーティストとしての在り方。

ファンの存在。

そして、裏側で彼を支える私との、これからのこと。

私は彼に迷惑をかけたくない一心で、「今のままで十分幸せ」だと自分に言い聞かせて、無意識のうちに自分の本心に蓋をしてきたのかもしれない。

ウェディングドレスが着たいとか、入籍報告がしたいとか、そういう世間一般的なことじゃない。

ただ。

スターとしての重たい鎧を脱ぎ捨てて、私の前でだけ無防備な顔を見せてくれる彼が。

私の前で「ここが本当のアンコール」だと言ってくれたあの不器用な男が、私との『この先の未来』をどんな形に思い描いているのか。

純粋に、それを知りたいと思った。

(……ねえ、湊)

窓の外の景色は、いつの間にか綺麗な夕焼け色に染まっていた。

今頃、彼はあのリビングで、何を思っているのだろう。

私は静かに息を吐き出すと、少しだけ強くなった自分の気持ちを確かめるように、再びキーボードへと指を滑らせた。
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