アンコールはリビングで
「……あー、もう。柄にもなく考えすぎかな」

小さく首を振り、私はマンションのロビーを抜けてエレベーターに乗った。

湊は、日曜日のツアーファイナルを終えてから現在、一週間の完全オフ期間に入っている。

すべてを出し尽くして空っぽになった彼は、きっと今日も家で泥のように眠っているか、ソファでのんびりと休養しているはずだ。

自分の家の玄関前に立ち、ふぅっと一息ついてから、カバンから鍵を取り出してドアを開けた。

「ただいまー……って、あれ?」

玄関に入った瞬間。

静かで暗い部屋を想像していた私の鼻を、甘辛くて香ばしい、食欲をそそる匂いが強烈に刺激した。

お醤油と、お酒と、お肉の脂が溶け合ったような、絶対に美味しい匂い。

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