アンコールはリビングで
定時を過ぎて会社を出ると、梅雨明け間近の湿気を含んだ風が、頬を撫でていく。

役所に紙を一枚出した、ただそれだけのことで、理紗たちは迷いなく二人の未来を形にしてしまった。

それが、どうしてか眩しかったのだ。

私は最寄り駅からのいつもの帰り道を歩きながら、無意識のうちに自分の左手首にあるプラチナのバングルに指先を這わせた。

私と湊の付き合いは、もう四年半にもなる。

一緒に暮らすこの日々は申し分なく幸せで、結婚という制度に強い執着があったわけではない。

けれど、理紗の幸せそうな顔を見た時、心の中でつぶやいてしまった。

表舞台で生きる彼は、私との未来をどう描いているのだろう、と。

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