アンコールはリビングで
「ほら、湊は今、一番大事な時期でしょ? ツアーも大成功したし、ファンの人たちのこともあるし、立場もあるし……。私は、今のまま、こうやって一緒にご飯食べて、笑い合えるだけで十分幸せだから! 本当に、何も気にしてないからね!」
彼に迷惑をかけたくない。
彼の重荷になりたくない。
だから、世間一般的な『結婚』という形なんて、私には必要ない。
私が必死に取り繕うように笑ってそう言い切った、その瞬間だった。
「……ふざけんな」
湊の低く、静かな声が、私の言葉をピシャリと遮った。
「え……?」
「……凪。それ、誰のために言ってんの」
カウンター越しに真っ直ぐに私を射抜く彼の瞳には、さっきまでの軽さがひとかけらもなかった。
奥にあるのは、静かで、けれど一歩も引かない光だった。
「歌うのは、俺にとって大事なことだ。それは嘘じゃねぇ。……けど」
湊はカウンターの上に両手をつき、顔を近づけて、逃げ場をなくすように私を見据えた。
「どう考えたって、凪のほうが大事に決まってんだろ」
「……っ」
ドクン、と。
心臓が、痛いほど大きく跳ねた。
彼に迷惑をかけたくない。
彼の重荷になりたくない。
だから、世間一般的な『結婚』という形なんて、私には必要ない。
私が必死に取り繕うように笑ってそう言い切った、その瞬間だった。
「……ふざけんな」
湊の低く、静かな声が、私の言葉をピシャリと遮った。
「え……?」
「……凪。それ、誰のために言ってんの」
カウンター越しに真っ直ぐに私を射抜く彼の瞳には、さっきまでの軽さがひとかけらもなかった。
奥にあるのは、静かで、けれど一歩も引かない光だった。
「歌うのは、俺にとって大事なことだ。それは嘘じゃねぇ。……けど」
湊はカウンターの上に両手をつき、顔を近づけて、逃げ場をなくすように私を見据えた。
「どう考えたって、凪のほうが大事に決まってんだろ」
「……っ」
ドクン、と。
心臓が、痛いほど大きく跳ねた。