「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
「みんな俺たちの存在を祝福してくれている。嬉しいことだな」
私たち……私の存在を祝福してくれている?
私は今まで生きていてはいけない存在だと思っていた。
民を苦しめ厄災をもたらす魔王だと、そう思っていた。
私は生きていることを許された?
生きることを許された。
「私は生きていて……幸せになって良いのですよね?」
「当たり前だ」
私たちが見つめ合うと、一層歓声が上がった。
「キャーー!勇者様!聖女様!」
屋敷の地下牢にいた頃は、こんな日が来るとは思わなかった。
ずっと牢屋に閉じ込められ、家族の声を聞いては悲しんでいた。
森で暮らし始めても、自分はこの世界に必要とされていない、邪魔な人間なのだと思っていた。
しかし今は皆が私を歓迎してくれる。
生きていてくれて良かったと言ってくれる。
幸せ過ぎて、胸がいっぱいで苦しくなる。
私は皆のおかげでこんなにも幸せになれた。
だから少しでいいからお返しがしたい。
私は祈るように両手を組むと祈りをささげた。
「この世界に祝福を……」
囁くように歌うようにそう声に出すと、体が淡く光りだした。そしてゆっくりと手を高く掲げると、光の粒が空から振って来た。雪のようにゆっくりと落ちてくる光の粒に、人々は歓喜した。
幸せそうに笑う民たちを見つめ、私たちも微笑みあった。
そして重なる二人の唇に更なる歓声が広がった。
民の歓声を聞きながら私は願う。
どうかこの世界の人々が幸せでありますように。
そう願いながら光の粒を見つめ歓喜する人々と、優しい笑顔のジュウド様の姿を目に焼き付けたのだった。
* FIN *