「魔王の定義」魔王になる運命の私は、その運命にあらがいたい
二人の世界に入っている私たちに、メイドの一人が申し訳なさそうに話しかけてきた。
「勇者様、聖女様、そろそろ時間ですのでご移動の方をお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」
「そうか、すまない」
ジュウド様はそう言って歩き出したが、私は未だにジュウド様に片腕で抱えあげられたままだ。ジュウド様の腕の上にお尻を乗せているだけなのだが、安定感は抜群で怖くない。ジュウド様はまるで私を見せつけるようにして、背筋を伸ばして王城の廊下を歩いていく。
「ジュウド様、あの……このまま行くんですか?」
「この方が君を守りやすい」
そう言われてしまうと何も言えなくなってしまう。
周りにいる人たちも何も咎める様子が無いためこのままで良いのかと思っていると、王城の中央にある大きなバルコニーまで来ていた。バルコニーの下には沢山の国の民たちが集まっていた。私たちは隠れるように隅で待機する。
最初にネクスト陛下が口上を述べ、国の新しい一歩となることを誓った。大きな声援が広がりネクスト陛下は満足げに頷いた。そして視線を私たちに向けた。
「今日は私の即位一年式だが、この二人の披露目の場でもある。さあ、勇者と聖女は前へ」
ネクスト陛下に促され、私たちはバルコニーの一番前まで行く。もちろんジュウド様に抱きかかえられたままだ。そんな私たちを見た民たちは一瞬息を呑んだが、それはすぐに歓声へと変わる。沸き上がる歓声に圧倒されてしまいそうになるが、ジュウド様が優しく声を掛けてくれた。