欲望と煩悩の狭間で初恋の彼女を愛でる
梨花子達の田舎は小学校も人数が少なく、中学校では近くの3つの小学校が同じ中学校に通うことになっていて、そこで出会ったのが仙道幸成(せんどうこうせい)くん。
1年のときに同じクラスになり最初の学級委員を一緒にしたのだ。
そこで気づいたのは男女問わず人気があること、モテる事……いつも話題の中心だった。
私は真面目でそこそこ頭も良く、委員長の仙道くんを影で支えてきたつもりだった。
でも、仙道くんを好きな女子には何度も睨まれた。
仕方ないよね……少し辛かったが1年間はやり遂げた。
2年はクラスも変わり、仙道くんの噂は聞くが話すことはなくて、そのまま高校も同じ高校に進学して、2年は同じクラスになり、修学旅行も同じ班に…楽しかった思い出は数々とある。
高校卒業と同時に上京するということは人気者だから噂で知った。
寂しく思ったのは…多少でも仙道くんの事が気にはなっていたのかも知れないが、いつも女の子を連れていて、何人も彼女が変わっていたのも噂で聞いていた。
高校の卒業式の次の日、梨花子はユキちゃんを散歩に連れて行くと、仙道くんが砂浜にいたのだ。
修学旅行の時に確かユキちゃんの事や毎朝散歩をしてる事は話した記憶はあるが、覚えていてくれた事にびっくりで、そこで仙道くんに言われた。
「実はお前の事、中学の頃から好きだった」
「えっ?」
「このままこの町を離れるのも後悔すると思って……明日、東京に行く、元気でな(笑)」
そう言うとそのまま帰ってしまったのだ。
梨花子は初めての告白を受けたが過去形だった事に、今更何?と少し苛立ちを覚えたのを記憶している。
その出来事があってから10年……
成人式も、同窓会も全部欠席どころか、連絡先もだれも知らないと……番号を変えたらしく繋がらないという。
成人式に男子が話しているのを聞いた梨花子だった。
「も、戻ってきたの?」
「まあな」
「みんな、連絡が取れないって心配してたよ」
「……そうだよな…まあ俺にも事情があってな」
「事情?」
「あぁ」
「聞きたいけど、私、仕事に行かなきゃならないんだ、ごめん」
梨花子はユキちゃんを連れて砂浜を歩き出した……
そのまま仙道くんは何も話さず、梨花子は階段を上がり、道路を渡り、家に帰って行った。