あの夏、キミが描いた青空

廊下から、バタバタと足音が聞こえる。



あたしの声を聞いて探しているのだ。



「ったく、お前が大声出したせいで」



隣の大野は呆れている。



「いやいや、元々はあんたのせいでしょ。あんたが私を脅かすから」



あたしも負けじと言い返す。



「はいはい、めんどくさい女は黙っとけよ」



そう言って大野は立ち上がった。



「え、どこ行くの?」



「帰る」



コイツは何を言ってんだか。



まだ廊下には先生がいるってのに。



「本気?」



流石に冗談だろう。



そう思って聞いたが、



「本気」



どうやら大野は本気みたいだ。



「ふーん。先生に見つかっても知らないから」



あたしは大野を引き離すように、素っ気なく言った。



ドアに近づいていく大野の背中を見つめるだけで、止めることはしなかった。



そして、大野がガラガラとドアを開けた。



「大野くん!?この時間に何してるのよ」



ほーら、言わんこっちゃない。



「ちょっと来なさい」



結局大野はふたりの先生に連れて行かれた。



そしてあたしは、その隙に机の中からテキストを取って、走って学校を出た。



大野も職員玄関から入ってきたのだろう。



職員玄関に『大野琥珀』と書かれた靴が置いてあった。



「大野って色んなものに名前書くんだなー」



何だかちょっぴり大野が可愛く思えてきて、頬が緩んだ。



大野は今頃怒られてるのかなー?



まあでも自業自得だよね。



再び傘を広げて歩くあたし。



テキストが濡れないように、何か入れ物を持ってくるべきだった。



色々考えた結果制服の中に入れて、その上から腕で押さえた。



何とか帰ってきたあたしは、部屋に行っきテキストを広げてシャーペンを握った。



この問題は今日の授業で習ったばかりだから、全くと言っていいほどわからない。



あたしは、元々勉強ができる方ではないため尚更だ。



めんどくさいけど、ひとつひとつスマホで調べながら問題を解いていった。
< 12 / 58 >

この作品をシェア

pagetop