幼馴染み勇者様との一途な身代わり初恋♡~勇者の幼馴染という負けポジションの妹の身代わりになったつもりで、つもりだったのに何故か執着溺愛されちゃった私の誤算。~

10 宿屋

 フェリクスの風の精霊を使った移動方法は、ただの人である私には負担が大きいから、三日かけて王都に向かうと事前に聞いていた。

 それを実体験として味わい、私は彼の言葉の意味を理解した。

 例えるならば、高速道路でのバイク移動を延々続けるような……そんな感覚かしら。私はフェリクスにしっかりと抱かれてはいるけれど、足場は不安定だし風が強すぎてとても目は開けていられない。

 三半規管が調子を崩してしまったのか、移動した後は車酔いに似た感覚に襲われて、一日に移動出来る時間は、そんなに長くはなかった。

 初日、何度か分けて移動した先で宿屋を取り、私は部屋に入ってベッドに倒れ込んでしまった。

「アリーチェ……大丈夫?」

「……うん」

 心配そうなフェリクスは、額に手の甲を当てた私の顔を覗き込んだ。

 慣れないと身体に負担が大きいと事前に聞いてはいたけれど、初日は予想以上に疲労してしまった。

「俺も最初は、しんどかったんだ……けど、慣れると便利だし、どうってことはないから」

「そうなの。うん。今日は、疲れちゃった……ご飯もあまり食べたくない。フェリクスは私を気にせずに、食べてきて」

 胃が悪くて受け付ける気がせず、私はぐったりとしていた。けれど、あの移動方法に慣れているフェリクスはお腹もすいているだろうと、宿屋の一階にある食堂に行くよう促した。

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