塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 ぐっと身を乗り出したレナルドは、笑顔なのに目の奥が全く笑っていない。今すぐこの場で決めろということかと、ラシェルは思わず父親と顔を見合わせた。父親の目は『無理に受けなくていい』と言っているようだが、ラシェルの心はもう決まっている。

 金銭的な援助を受けるなら、セヴランよりもレナルドに頼ったほうが絶対にましだ。性的な意味合いで望まれるより、政治的な理由で嫁ぐ方がいいに決まっている。

 何よりラシェルは、レナルドのことが好きなのだから。こんな形で初恋が叶うなんて、思ってもみなかった。 

 大丈夫だという気持ちを込めて父親に小さくうなずいてみせると、ラシェルはあらためてレナルドに向き直った。

「分かりました。お受けします」
< 10 / 167 >

この作品をシェア

pagetop