塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 ラシェルの体形に合わせて微調整をして、来月には完成とのことだ。その頃、レナルドの記憶はまだ戻っていないのだろうか。

 素敵なドレスを仕立ててもらったのは嬉しいが、彼が記憶を取り戻せばこのドレスも出番がなくなってしまう。着るかどうかも分からないのに、もったいないことだと思ってしまうが、仕方がない。

 これを着て、レナルドの隣に並べる日が来ればいいのにと思いつつ、ラシェルはドレスショップを後にした。

「素敵なドレスでしたねぇ……。ラシェル様、本当によくお似合いでした」

 店を出た瞬間、コレットが興奮したように話し始める。さすがに店内では黙っていたが、ずっと彼女の目はきらきらと輝いていたのだ。

「ありがとう。帰ったら、レナルド様にもお礼を言わなくちゃね」

「ドレスを着たラシェル様を見たら、レナルド様はきっと卒倒しちゃいますね! あのドレスなら、髪はどんなアレンジが素敵かしら。わたし、メイクの練習もしておきますね!」

「着る機会があるかは分からないけど……」

「夜会に出なくても、レナルド様の前で着るだけでいいんですよ。たった一人のためのドレスって、すごくロマンティックだと思いません?」

 うっとりとした様子でコレットが両手を組んで目を閉じる。どうやら、恋愛小説が大好きな彼女の心に響いたようだ。そんな彼女を見つめて苦笑しながら、ラシェルはゆっくりと歩き出した。

 ドレスに合わせるアクセサリーの話や、店に並んでいた商品が可愛かったことなど、コレットが楽しそうに話すのを聞きながら歩いていると、ふと前方に見覚えのある姿を見つけた。あまり嬉しい相手ではないので、ラシェルは思わず足を止めてしまう。

「ラシェル様?」

 うしろからコレットが戸惑ったように声をかけてきたのと同時に、前方に立つ人物がラシェルに気づいた。彼は、驚いたように声をあげるとまっすぐにこちらへと向かってくる。苦手な幼馴染との再会に、ラシェルは内心で顔をしかめた。
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