塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 低い声でそう言うと、レナルドはラシェルの身体をくるりと返してうつぶせにした。そして、まるで引きちぎるような勢いでドレスの背中についたリボンを解いていく。あっという間に脱がされたドレスは、くしゃくしゃになってベッドの下に投げ捨てられた。

 今までのレナルドからは想像できないほどの荒々しさに、困惑が隠せない。

「ここにも、印をつけておかなきゃな」

 唸るようにそう言いながら、レナルドはラシェルの身体のあちこちに赤い痕を刻んでいく。

 そのまま激しく抱かれ、ラシェルは戸惑いながらもそれを受け入れた。

 初夜とも、二度目の夜とも違って、どれが本当のレナルドなのだろう。

 痛みと快楽がごちゃまぜになって、何も考えられない。

 縋るようにシーツを握りしめたラシェルを見て、レナルドは顔を歪めた。

「俺に頼るのは、そんなに……嫌か」

 その声が泣き出す寸前のように聞こえて、ラシェルはハッとする。そんなはずないと首を横に振ったラシェルを見下ろして、レナルドは苦しそうな顔になった。

「誰がなんと言おうと、きみは俺の妻だ……。絶対に離縁なんて、しない……絶対に、だ」

「レナルド様……」

 どうして彼がそんなことを言い出したのかは分からない。人前でのキスを拒んだことが、ここまで彼を追い詰めたのだろうか。

 レナルドの心の内は分からないものの、ラシェルは離縁を望んだことなんて一度もない。こんなに荒々しく抱かれていたって、ラシェルは彼のことが好きなのだから。

 ラシェルはゆっくりとレナルドに向けて手を伸ばした。戸惑った様子の彼を見上げながら、ラシェルはお互いの指を絡めるようにして手を繋ぐ。

「私は、確かにレナルド様の妻ですよ。……あなたがいらないと言うまで、ずっとそばにいます」
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