塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 結婚間近だと言われていた二人の仲を裂いたのは、レナルドだ。

 どれほど愛を囁こうとも、ラシェルの心までは手に入れられなかった。



 薄暗い温室の中で、レナルドはうずくまったまま立ち上がることができない。 

 さっき、屋敷の外で二人が会っているのを見た瞬間、レナルドの心は嫉妬で焼き切れた。

 冷静に考えれば、二人は密会していたわけでもない。ラシェルのうしろには侍女のコレットが控えていたし、偶然出会っただけだったのだろう。

 それでも、セヴランにラシェルを奪われてしまうと焦ってしまったのだ。

 嫉妬のままにラシェルを抱き潰し、きっと彼女の心を傷つけた。

 二度と、ラシェルはレナルドに笑いかけてくれないだろう。仲睦まじい夫婦のふりも、もう終わりだ。

「……どうすればいいんだ」

 掠れた声でレナルドはつぶやく。

 離れていった彼女の心を取り戻す術は、あるのだろうか。

「記憶が戻ったことを打ち明けて、本当は最初からきみを愛していたって……ちゃんと伝えれば、届くのか」

 頭を抱えて、レナルドはそこから動くことができなかった。
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