塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 誰にも打ち明けていなかったはずなのに、一番身近にいた兄に知られていたなんて。

 羞恥に小さく唸ったラシェルの頭を、エリクはなだめるようにぽんぽんと撫でた。

「だからね、ラシェルの想いが叶って本当によかったなと思っていたんだ。レナルド様は本当にいい方だ。きっとラシェルを大切にしてくれるだろう。あらためて、結婚おめでとう」

「……っ」

 心から嬉しそうな声で祝福されて、ラシェルの胸がぐっと苦しくなった。こんなにも祝ってくれる兄に、本当は愛されていないなんて言えるはずがない。

 結局レナルドとのことを話すことができないまま、ラシェルはエリクと別れた。

 重い足取りで屋敷に帰ろうと歩いていると、突然うしろからぐいっと腕を引っ張られる。

「きゃ……!?」

 よろめいた身体を立て直して振り向くと、そこにいたのはセヴランだった。
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