塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 掠れた悲鳴をラシェルが漏らした瞬間、部屋の外から荒々しい足音が聞こえた。それはセヴランにとっても予想外だったのか、彼は小さく舌打ちをして身体を起こす。

「なんだ……?」

「どこだ、ラシェル!? ラシェル、いるんだろう!?」

 外から聞こえた声に、ラシェルは息をのんだ。大好きな人の声を、聞き違えるはずがない。返事をしようとしたラシェルに気づいたのか、セヴランがラシェルの口を塞ごうとするが、もがきながら拒む。そして、必死に声を振り絞った。

「っ、レナルド……様……助けて……!」

 あまり大きな声は出せなかったが、彼には届いたらしい。ラシェルのいる部屋の扉が、外から激しく叩かれた。扉には鍵がかかっているが、なんとか開けようとしているのが分かる。

「くそっ、なんであいつが……」

 苛立ちと焦りを顔に浮かべて、セヴランがうろうろと周囲を見回す。だがセヴランが動く前に、扉を蹴破ったレナルドが部屋の中に飛び込んできた。
< 147 / 167 >

この作品をシェア

pagetop