塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「俺が、最愛の妻を一人で出歩かせるわけないだろう。今日は家族と会うから気を遣わせたら悪いだろうと、遠くから見守らせていたのが悪かったな……。ラシェルがおまえに連れ去られたと報告を受けた時は、目の前が真っ暗になった」

 すさまじい怒りのこもった表情でレナルドはセヴランをにらむが、セヴランは馬鹿にするように鼻で笑った。 

「ハッ、結局ラシェルを信用してないってだけだろ。おれと密会するかもしれない、逃げられるかもしれないって心配だったくせに」

「あぁ、そうだな。ラシェルはいつまで俺のそばにいてくれるだろうかと、ずっと不安だったよ。護衛をつけたのだって、おまえのいう理由がなかったとは言わない。ラシェルが離れたいと望むのなら、受け入れるしかないと思ってた。だが、ラシェルは俺のことを好きだと――そばにいたいと言ってくれた」

 ちらりとラシェルを振り返ったレナルドは、微かに表情を緩める。さっきセヴランに向けて叫んだ言葉は、レナルドの耳にも届いていたようだ。

 無我夢中だったとはいえ、思わず漏れた心からの叫びを聞かれていて少し恥ずかしい気持ちになる。

 二人が一瞬見つめあったことに気づいたのか、セヴランは苛立ったように顔を赤くすると、ドンと壁を殴りつけた。

「うるさい! おれからラシェルを奪ったくせに……!」

「ラシェルがおまえのものだったことなんて、一度もない」

 間髪入れずそう言ったレナルドを見て、セヴランはますます顔を赤くする。

「黙れ! こいつはおれのものになる予定だったんだ。借金で困っているところを助けてやるつもりだったのに、おまえが勝手に……!」
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