塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
 まるで心の中を読まれたような気がして驚くラシェルに、レナルドは少し眉尻を下げて笑った。

「もちろん、忘れたことはない。結婚の申し込みをした時、ラシェルがあの日のことを覚えていてくれて本当に嬉しかったんだ。だけど、何を言っていいか分からなくて……。それで、ラシェルに覚えてないですよねって言われて余計に何も言えなくなって……」

 どこか苦い笑みを浮かべるレナルドだが、彼の語った内容にラシェルは動揺を隠せない。だってレナルドは、この結婚のきっかけは覚えていないはずなのだ。数年分の記憶を失っていたはずなのだから。

「え……待って、結婚の申し込みの時って……。レナルド様、記憶が戻って……?」

 動揺のあまりうろうろと視線をさまよわせながら問いかけたラシェルに、レナルドははっきりとうなずいた。

「うん。全部思い出してる。最低な理由できみに結婚を申し込んだことも、『形だけの夫婦でいい』と言ったことも、初めての夜にきみに無理をさせたことも」

「うそぉ……!?」

 馬車の中に、ラシェルの叫びが響き渡った。

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