塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
――それに、全然痛くなかったし。
心の中でつぶやいたラシェルは、ふと何か違和感を覚えて目を瞬いた。
初夜の記憶は痛みに耐えていたことが大半だったが、さっきは痛みを感じることもなかった。言葉も交わさず目も合わないままの行為は心がすり減るようだったが、今夜はレナルドがずっと手を握ってくれていた。
そこまで考えて、ラシェルは小さく息を詰めた。
快楽に耐えようとしたラシェルがシーツを握りしめた時、レナルドはそれを止めた。そして、今夜は自分を頼ってと言いながら手を握ってくれたのだ。
――まるで、初めての夜に私がシーツを握って痛みに耐えていたことを知っているような……。
それに、まるで初めてラシェルを抱くかのようなそぶりを見せていた気もする。『仲睦まじい夫婦』である二人は、何度もこういった夜を過ごしていたと彼は思っていたのではなかったか。
もしかして、レナルドの記憶は戻っているのだろうか。そんな予感に、鼓動が速くなる。
だが、記憶を取り戻した彼が、こんなにもラシェルに愛を囁くとは考えられない。レナルドは、ラシェルのことを愛していなかったはずなのだから。
きっと気のせいだと思うことにしたが、ラシェルはそのまま寝つくこともできず、彼の腕の中でただじっと考え込んでいた。