塩対応だった旦那様が記憶喪失になったら、執着溺愛して離してくれなくなりました
「いえ、平気です。すみません、少し意識を飛ばしてました」

「俺も夢中になってしまって、加減できなくて……ごめん」

「大丈夫です。あの……すごく、気持ちよかったし……」

 もごもごとラシェルがそう言うと、レナルドは照れくさそうに笑った。

 そっと抱き寄せられて、ラシェルは彼の胸に頬を擦り寄せた。いつの間にか寝衣が着せられていることに驚いていると、レナルドが軽く身を清めてくれたらしい。そんなことをさせてしまったなんてと申し訳ない気持ちになったが、彼は「むしろラシェルの世話をできて嬉しかった」と楽しげに笑った。

 あらためてレナルドの腕に包まれて、ラシェルは小さく息を漏らした。伝わってくる彼のぬくもりに、幸せな気持ちになる。レナルドの手は、慈しむようにラシェルの髪を梳いた。

「本当なら一晩中でもラシェルを抱いていられそうだけど、さすがに今夜はやめておく。だけど、朝までこうしてきみを抱きしめていたい。今があまりにも幸せすぎて、目が覚めたらラシェルがいなくなっていそうで怖いんだ」

「私はどこにも行きませんよ」

「うん、ずっと俺のそばにいて。愛してる」

 そう囁いて、レナルドはラシェルの額に口づけを落とした。

 お互いの体温がまざりあうような心地よさにラシェルが浸っていると、頭上から微かな寝息が聞こえてきた。思わず視線を向けると、レナルドはいつの間にか眠っていた。

 彼の寝顔をじっと見つめながら、ラシェルはさっきまでの甘く熱い時間をぼんやりと思い出していた。

 初夜とは正反対と言っていいほどに、何もかもが違っていた。

 レナルドはあふれるほどの愛の言葉をラシェルに贈ってくれたし、触れる手や唇からも愛されていることが伝わってきた。
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